誰かが他の人に宛てた手紙を読むなんてきっと初めて。
こんな気持ちにとても馴染みがある。この文章は私のものでもあると、そう実感がある。
私はこの気持ちを知っている。
始まりが予感できたように、私はこの恋がどう終わっていくのかもきっと知っている。
旅に出る準備をしながら、かばんに詰める本を吟味しながら3ページだけ読んでしまった。続きは船の中で読もう。
物語の序章は、私の旅立ちを告げるかのような滑らかな書き出しで。
私がドアをばたんと閉める音、鍵を取り出しかちゃかちゃとひねる音と
誰かのページを捲る音が重なる。